手織り絨毯とは

毛を刈り、糸を紡ぎ、染め、織る。
ひとつひとつの作業が現地の人々の手によって作り上げられます。

全てが手作業の一点もの。

手作業の良さは素材や織りの経過を人の目で見、確かめながら作れる事。特に絨毯に使う羊毛や絹の天然素材、天然染料による染め糸では素材の細さ太さ、色の具合など必ずしも均一ではありません。絨毯の柄や全体のバランスを見ながら作られる絨毯は、一つとして同じものはないのです。

百年以上、代々使えます。

ペルシャ絨毯には約2500年の歴史があると言われています。ペルシャ絨毯の中でも芸術性に優れているアルダビール絨毯は1540年頃に作られたものが、英国ヴィクトリア&アルバート博物館に収蔵されおり、今でもその美しさを失っていません。
もちろんすべての中東の絨毯が500年も持つわけではありませんが、中東の絨毯は敷物、壁掛け、ものによっては物を包んで運ぶなど多様な用途に使われるため、基本的にとても丈夫に作られています。
さらに、擦れてもほどけても、直して使う伝統があり、メンテナンスをし続ければ何十年、百年以上と長く使えるものなのです。

上質な天然素材。

アミールが扱う中東の手織り絨毯は、その素材を羊毛と絹の天然素材のみに限っています。羊の毛を刈り、毛を撚り、糸にするところから、現地の人の手を介し、その触感や質の善し悪しを身体で感じながらものづくりをしているのです。
アミールではこうした人々の技量や素材の特性を活かし、手触りや風合いがしっかりしている上質な絨毯のみを扱っています。

芸術品としても
価値を見いだされる絨毯。

絨毯は敷物として生活用品の一部になっているだけでなく、飾って鑑賞するものともなっています。上記のヴィクトリア&アルバート博物館収蔵のアルダビール絨毯だけでなく、ベルリン美術館やニューヨークのメトロポリタン美術館など多くの美術館、博物館で美術工芸品として収蔵され、旧ペルシャのイランや、イランの北に位置するアゼルバイジャンには絨毯専門の博物館もあるほどです。

アミールが扱う手織り絨毯について

産地

ペルシャ絨毯と一言で言っても、様々な種類があります。産地によっても少しずつ異なる特徴があります。気候風土や民族の違い、それぞれの土地での使われ方の違い、絨毯の生産地としての歴史など様々な背景を持つものです。こうした背景を知ることで、より絨毯の世界に楽しみを見いだすことでしょう。

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独特な結びや織り

ペルシャ結び
トルコ結び
キリムの織り

絨毯は織機によって作られます。縦糸を張り、横糸を絡ませながら布状のものにしていきます。中東の手織り絨毯は、壁に沿って直立した織機を使います。縦糸はコットンまたはウール。絨毯は表面に毛足(パイル)を出していくため、縦糸に横糸を絡めては切り絡めては切り、という作業を繰り返します。細かい模様を正確に作り出すために一つ一つの横糸の配置が作られています。
絡め方には「ペルシャ結び」と「トルコ結び」があります。ペルシャ結びは、2本の縦糸に対し、横糸を1本にくるりと回し、もう1本の縦糸に引っ掛ける状態になっています。トルコ結びは横糸を2本の縦糸の外側から回し、2本の間から横糸を出していきます。
現在は結び方もやや混在していますが、ペルシャ結びは主にイラン及びイラン以東で、トルコ結びはトルコ、コーカサス、イランの一部で使われています。一般的な布と同様の平織り、綾織りの方法で織られたものはキリムと呼ばれています。

キリムの織り

一般的な布と同様の平織り、綾織りの方法で織られたものはキリムと呼ばれています。

デザイン・文様

メダリオン
サソリ
象の足跡

絨毯のデザイン・文様には遊牧民族の暮らしの中にあるものをモチーフとしたものや、彼らの心に思い描いた願い、自然への憧れなど、様々な意味が具象化されています。
「メダリオン」…ペルシャ絨毯でよく見られる、円形もしくは円に近い形の模様を中心に配置したもの。加えて四隅にも同様の模様を配置している。
「サソリ」…命を守るという意味合いを持つモチーフ。守り神。サソリはドラゴンの仮身ともされ、雨を降らせるとも。
「象の足跡」…足跡には福が来るとの言い伝えがある。部族により異なる文様。
「羊」…遊牧生活を代々ともにする羊は、子孫繁栄と豊かさの象徴でもある。

素材の特徴

ウール
ペルシャ絨毯に使われる素材のうち一番良く使われるものは羊の毛、すなわちウールです。防湿性や保温性に優れています。獣毛では他に山羊やラクダの毛も使われます。ウールで最上のものとされているものはイランの西部、トルコ国境寄りのクルド族の居住する地方のものとされています。
ウール×シルク
ウールとシルクの素材感それぞれを活かし、同じ絨毯の中で使い分けをしたり、最初から糸がウールとシルクの混紡になったものを使う場合もあります。表面に出ている部分にはウールやシルクが使われていますが、縦糸にはウールやコットンを用いるのが一般的です。
シルク
シルクはその光沢や軽さ、糸の細さによる細かな模様による美しさが特徴的です。もともとは寺院、祈祷用、皇族用に作られていました。
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タブリーズ(イラン)

現イランの中でもトルコに近い産地で、トルコ結びで作られ、密度の高い織りが特徴です。メダリオンを中心に細かな装飾を施したものが代表的なデザインです。

クム(イラン)

絨毯作りを始めたのが 1930 年頃と、他の地域に比べ遅かった事もあり、他の地域の絨毯の美しい部分をさらに強調したデザインが特徴です。細かい柄はシルクを素材とし、高級な製品作りをしています。

トルクメニスタン

遊牧民がその土地その土地で織機を組み立て絨毯をつくります。ギュルという文様が特徴で、ストックバック、馬の鞍、クッションなどの敷物以外の様々な生活用品も絨毯でつくられています。

イスファハン

16世紀サファビー朝がこの地を首都と定め、王室直営の工房が数々作られました。クルクウールを作った精巧で緻密な絨毯はペルシャ絨毯の代名詞となっています。

バルーチ(イラン、アフガニスタン、パキスタン国境)

ホラサーン地方の部族によって織られた絨毯です。各家庭に伝わる文様を織っているのが特徴です。

カシャーン(イラン)

流行にとらわれない伝統的で正統派のデザインが特徴です。古くから伝統工芸の町として栄えサファビー朝で王様によって育てられた職人気質を代々受け継いでいます。

ナイン(イラン)

上質のウールの産地として栄え、1920年代イスファハンから絨毯が伝わり、現在は主要産地となっています。メダリオン模様のオーソドックスな絨毯が特徴です。

パキスタン

ムガール王朝のアクバル大帝(1556~1605)が、ペルシャのイスファハンから織匠を招いて 王宮用の敷物をラホールの宮廷で織らせたのが、当地における生産の始まりといわれています。

トルコ

アジア側のアナトリア絨毯とも称されます。古くから東西文化の接点であり、多くの部族を抱えることから、絨毯も日常で使うラグから大きく豪奢なカーペットまで様々な絨毯の種類があります。

マシュハド(イラン)・アシガバート

トルクメニスタンに近いイラン東北部にある都市、マシュハドやトルクメニスタン側にあるアシガバートでは、トルクメン族の作る絨毯(トルクメン絨毯)を多く見る事ができます。中東の絨毯の多くが綿を縦糸に使うのに対し、トルクメン絨毯では縦糸に羊毛を使っていることが非常に特徴的です。柄は細かな模様を反復し、茶色から紫まで深い赤系の色などが特徴とされています。

マシュハド(イラン)・アシガバート

トルクメニスタンに近いイラン東北部にある都市、マシュハドやトルクメニスタン側にあるアシガバートでは、トルクメン族の作る絨毯(トルクメン絨毯)を多く見る事ができます。中東の絨毯の多くが綿を縦糸に使うのに対し、トルクメン絨毯では縦糸に羊毛を使っていることが非常に特徴的です。柄は細かな模様を反復し、茶色から紫まで深い赤系の色などが特徴とされています。

シラーズ

遊牧民族カシュガイ族の住む地域にあるシラーズでは、彼らの作ったキリムのような平織りの絨毯や、毛足の長いギャッベなどが取引されています。素朴なトライバルラグを多く見ることができます。